今まであげた遊びはすべてお金のかからないものばかりだ。
 東京では石蹴り用に平たいガラス玉を売っていたらしいが、糸魚川では海水浴のついでに拾ってくればいい。ゴム段のゴムは、親から幅広の白いゴム紐(パンツ用!)をもらった。無ければ輪ゴムを持ち寄ってつなげた。ゴム鞠は一個あればいいし、姉妹でお下がりにもできた。
 しかし「イッチョ」だけは買わなければいけない。しかも負けると相手に取られてしまう。だから真剣勝負。上手な子は空き缶に入れて大量に持っていた。
 当時駄菓子屋で幾らだっただろう。
 去年古本屋で一枚六十円の値がついているのを見かけた。怪獣の絵だった。イッチョはやっぱり武者絵でなくてはと思って買わなかったが……めったに出ない掘り出し物だったかもしれない。
「おいおい、イッチョとは何だ?」
「はい、メンコのことです」
 イッチョは方言だろうか、もう一丁(もう一回)が縮まったのか、賭博の丁半に由来するのか──よくわからない。
 考えれば子どもにとっては遊べればいいのであって、どう書くかなど、まるで関心がなかった。

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