児童文学作家~小川英子の部屋

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日々雑感

一本目と最新をこのページに掲載します。バックナンバーはこちらからどうぞ。

糸魚川の大火(3)

  私が子どもの頃、朝は必ずおかゆだった。米から炊くのではなく、冷ご飯をかゆにする。
 これは町屋の風習で、「糸魚川ふるさとカルタ」の「ま」の札にも、「町屋の朝はおかゆかお菜入り」とある。
 糸魚川は火事が多いので、晩ご飯を多めに炊く。夜中に火事があった場合、それを炊き出しとして持ち寄るのだ。被災者や消防団にふるまう。
 今のようにスイッチ一つでご飯が炊ける時代ではない。かまどに薪で炊いていたのだ。とにかく腹を満たして力をつけてもらおうというわけである。
 おにぎりにしておくという話も聞いたが、我が家ではおひつに余らせておくだけだった。
 何事もなく朝を迎えたなら、無事を感謝しつつ、余った冷やご飯をおかゆにして食べる。
 かまどではなく電気釜に切り替えても、この習慣は私が大学進学で上京するまで続いていた。白いおかゆにお醤油を垂らして食べるのが好きだった。
 六歳違いの妹に聞いたら、曾祖母が亡くなった一九七〇年頃からは止めたようだ。
 今でも朝がゆの習慣を守っている町屋はあるだろうか。町屋の朝がゆは火事の多い糸魚川の助け合いの気持ちを表している。
(2017/01/24)

昔、雁木は……(1)

 「がんぎ」とは言わなかった。「がげ」と呼んでいた。そこは通り道というより、子どもの遊び場だった。通行人に遠慮しながら、時には叱られながら、下駄隠しやがんどう、ゴム段、鞠つき、それにイッチョをして遊んだものだった。
さすがに石蹴りはしなかった。それは家の裏や道路や校庭でする遊びだった。子ども心にもわかっていたのだろう、チョークで陣地を描いて店の前を汚してはいけないと
雁木は本当は私有地だ。雪に閉ざされても行き来ができるように、各家が軒下を道として提供しているのだ。
本町通りはその雁木が連なり、私が子どもの頃は駅前まで傘を差さずに行くことができた──と書こうとして、あれ、ほんとにそうだったかなと急に自信がなくなった。
昭和二五年一月生まれの私はもうすぐ六五歳、前期高齢者になる。十年一昔と言うが、もう五つも六つも昔を重ねた。
朝粥を食べ、囲炉裏端でばたばた茶を飲んでいた町屋の暮らしや子どもの遊びを、まだ覚えているうちに書いておきたい。セピア色の思い出も語っていくうちに当時の色を取りもどすだろう。
不定期の更新になるが、お読みいただければ幸いである。
(2014/12/18)

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プロフィール

1950年新潟県糸魚川市本町通りの倉又茶舗に生まれる。新潟県立糸魚川高等学校43年卒。私立二松学舎大学文学部卒。
幼い頃より本を読むことが好きで、やがて書く側にまわる。
シナリオセンターや「都筑道夫の推理小説作法講座」等で学んだ後、1991年「雲の子水の子」でフェリシモ大賞優秀賞を受賞。翌年、絵本として『雲の子水の子』(フェリシモ出版)を刊行。
1993年 青海町からおもちゃの赤いピアノを背負って、トーキョーへ出てきた子猫の物語「ピアニャン」で講談社児童文学新人賞を受賞し、翌年『ピアニャン』(講談社)を刊行。これをきっかけに児童文学の道に進む。
2010年「くらひめさま」で第16回児童文学ファンタジー大賞奨励賞を受賞。
他に『山ばあばと影オオカミ』『あけちゃダメ!』『けむり馬に乗って~少年シェイクスピアの冒険」など奇想天外なファンタジーが多い。
「夢があるから落ちこむけんど、夢があるから立ちあがれるんね」はピアニャンのせりふ。これをモットーに書き続けている。
『ピアニャン』は岩淵デボラさんと遠田和子さんにより英訳され、電子書籍『Little Keys and the Red Piano』となって、世界中で発売されている。
また、電子書籍の短編集「めるへん・BOX」シリーズの制作に係わり、「林博子のめるへん・BOX さわやかな水色の小箱をどうぞ」の編集を担当した。

著書の一部をご紹介

書影・書名からリンクされているのは e-hon(http://www.e-hon.ne.jp)の本のページです。お近くの書店でお受け取りになれます。

ピアニャン

上田三根子/絵
講談社

山ばあばと影オオカミ

奈知未佐子/絵
新日本出版社

あけちゃだめ!

奈知未佐子/絵
新日本出版社

けむり馬に乗って~少年シェイクスピアの冒険

叢文社

 

 (一社)日本児童文学者協会会員
ファンタジー研究会会員
「天気輪」同人
「糸魚川の町屋文化を守り伝える会」代表
「紅梅文庫を活用する市民の会」会長
「特定非営利活動法人むらまち三世代」理事
書評やコラムを シミルボン で書いていますので、ご覧ください。
https://shimirubon.jp/users/1673245

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