旧倉又茶舗での「紅梅文庫冬ものがたり」では、紅梅文庫所蔵の稀覯本4冊と準稀覯本1冊の計5冊を展示します。
これは貴重な本ですので、展示のみです。
他の本や絵本・しかけ絵本などはどうぞご自由にお読み下さい。赤ちゃんづれも大歓迎。旅の衆もふらりとお立ち寄りください。

1,稀覯本『絵が動く四本足の友だち集』(1889年刊)

最初期のしかけ絵本として貴重。ロンドンから健康のために田舎に行った女の子が農園の動物たちに出会う物語。タブを動かすと動物の手足やしっぽが動く。

2,稀覯本『たのしい気晴らし画面集』(1894年刊)

しかけ絵本の黄金時代を築いたアーネスト・ニスターの作品。

3,稀覯本『わたしの人形の家』(1921年刊)

主人公の少女ベティが、人形のプリシラの家に遊びに行き、プリシラの家族にも紹介してもらい、楽しい時間を過ごして帰ってくる。それを裏表紙のうらのポケットに用意された人形や猫などを使って、ごっこ遊びのように、人形の家で遊ぶことができる。

4,稀覯本『ブッカーノ物語集』(1934年刊)

物語や詩のなかに、突然、華やかな場面が立体的にホップアップしてくるしかけ絵本。
6カ所のしかけがあるが、今回は「花が立ちあがり、アゲハ蝶が止まっている」ページを展示している。

5,準稀覯本「野菜人間の復讐」(1897年刊)

この「絵本」は、イギリスの児童文学作家フローレンス・ケイト・アプトン(1873―1922)の絵本『野菜人間の復讐』The Vege-Men’s Revenge(1897)を下敷きにしている。
物語は、菜園に野菜を取りに行ったポピー・コーンフラワーという少女が、野菜の王国に入り込み、そこからたまねぎのひくかぼちゃの馬車で地面の穴を通って地下世界にはいり、ジャガイモの王様、マーフィー王の宮殿に到着する。
王様は日ごろ野菜たちに対して残酷な人間への復讐として、ポピーを地面に植え、野菜たちのための食物として育てることにする。
復讐心に燃えた野菜たちは、輪になって踊るうちに次第に速さを増し、光の輪になり、最後にはすべてのものが崩れ去り、ポピーは夢を見ていたことを知る。
少女が地下の世界に行き、そこで奇妙な冒険をするという物語の枠組みや晩餐会の場面、さらに最後にすべてが夢だったとわかる結末など、ルイス・キャロルの『ふしぎのくにのアリス』と『かがみのくにのアリス』を思わせる部分も多い。
絵本の文字は手書きで、野菜たちの足のような、傾いた独特の形をしている。
アプトンはこの『野菜人間の復讐』の他に、処女作でもある『二つのオランダ人形の冒険』(1895年)が有名。ここに出てくる人形ゴリウォグは、独立したキャラクターとして人気を博し、ドビュッシーの『子供の領分』の一曲「ゴリウォグのケークウォーク」にもなった。

稀覯本の解説は、1~4は三宅興子氏、5は中田晶子氏の解説を参考にまとめました。